キャロリーンフリーニー女史原稿要約+著者まとめ
米国は国外で起きている政治的、経済的変動要因を最も受けにくい国であるとされている。とはいえ中国の景気がスローダウンし、英国がEU を脱退するというニュースは確実に何らかの影響を与えそうである。
米国不動産協会(NAR)がこのほど「2016 年米国居住用不動産における海外からの動き」と題する報告書を発表した。調査は2015 年3 月から今年の4 月までの期間に米国住宅不動産を対象として行なわれた。
海外からの購入額は総額1026 億ドルと昨年同時期に行われた時と比較して1.3%ダウンした。これで海外からの購入総額は2013 年以来最低の水準となった。しかし購入者数は昨年より増加している。同協会ではその原因として米国の不動産価格が上昇したこと、そしてドルが各国の通貨より強くなったことをあげている。
国別でみると中国からの投資はまだ増加していた。取引数で全体の14%に達するばかりか、投資額でみると中国だけで2−5位までの4カ国からの買い手が購入した総額を上回っている。
調査したチーフエコノミストローレンスユン氏によると、「グローバル経済の成長鈍化、
海外通貨の価値下落により海外からの米国不動産投資は以前より厳しい状況になってきた。
海外からの不動産購入総額は減ったものの、一部の国からの購入額が増え続けている。特
に中国からの購入者は米国を訪問先はもとより住む場所としても好ましいとして確実な投
資先と見ているようだ。また購入価格も中間値で$542,084 と他国の買い手よりかなり高価
格となっている。」と述べている。
海外からの購入者が購入している州のトップ5は
1. フロリダ 22%
2. カリフォルニア 15%
3. テキサス 10%
4. アリゾナ 4%
5. ニューヨーク 4%
となっている。
ラテンアメリカ、ヨーロッパ、カナダからの投資家は暖かい地域を好み、アジアからの投資家はカリフォルニアやニューヨークを狙っている。テキサスはラテンアメリカ、アジア、カリブ海地域からの投資家が多い。海外からの購入者による購入額は平均$277,380 と米国平均を上回っている。全購入の半分が現金購入となっている。
全米住宅価格はこの1 年間で約6%上昇した。また対ドル通貨価値が下がった。その結果自国通貨価値にして最も米国不動産価格の値上がりが大きかったのはベネズエラ(+45%)とブラジル(+24%)でその他にも中国やカナダなど8 カ国で二桁以上の値上がりとなった。
ユン氏は中国の状況について「通貨はドルに対して弱くなったが、5−10 年前と比較すれば強くなっているので未だ比較的投資しやすいのではないだろうか。」と述べている。
当分英国のポンドが弱体化し、ユーロも先行き不安から弱含みになることが予想される。したがって同地域における不動産に対する見方もかなり悲観的にならざるをえない。そうなるとカントリーリスクが少ない米国は通貨とともに不動産に対する海外からの信頼は強くなることはあっても弱くなりえない。
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