アディパブロビック氏による記事の要約
不動産 IT への投資が破竹の勢いで止まらない。CB インサイト社の調査によると 2011 年から同部門に投 資された総額はグローバルで 60 億ドルに及び、この 5 年間で 10 倍に伸びたという。そのうちの半分が 米国での投資となっている。
2016 年は8億 2130 万ドルが投資され、このままのペースで行けば 10 億ドルを突破することになる。
これまで不動産業界は IT 技術革新に対して鈍い反応を示していたが、Zillow、スマートジップ、プレー ススターといった企業の出現で多くの起業家や投資家が集中するに至った。 上図のように投資額は一定して増加傾向にあるが、今年は投資件数がマイナス 70%と大きく減少してい るのが大きな特徴である。これはスタートアップ企業の数が減り投資マネーがより確立された大型案件 に流れていることを示している。
投資マネーの行く先
不動産 IT ビジネスを6つのカテゴリーに分けてみた。
● 検索:売買・賃貸のポータル
● フィンテッック:融資、クラウドソーシングプラットフォーム、投資家用分析ツール
● ディスラプター:FSBO(売り手直売)、ディスカウントブローカー、新たな仲介ビジネス l PM:不動産管理
● ビッグデータ:不動産アナリティックスに必要なツール
● その他:主にエージェントのマーケティング、ショーイング、受諾などに使われるツール
今年のデータを見ると投資額のほぼ半数がフィンテックに流れている。3 四半期で 3 億 8000 万ドルに達 している。典型的な企業はローンデポ、リアルティーシェア、カドレ、ブレンド各社である。こういっ た企業は融資を消費者にとってわかりやすく簡単にするとともに、融資元の一端を担う役割を果たしている。
フィンテックに次いで多かったのは PM 部門で今年はこれまでで2億 3000 万ドルに達している。この部 門では SMS アシスト、VTS 各社への投資が著しい。
検索やビッグデータ部門への投資は過去2年間かなりスローダウンしてきた。これは市場に参入プレー ヤーが増え続け、ほぼ市場規模の伸びが安定し飽和し始めたことを示唆している。
ディスラプター(Disruptor)は既存のマーケティングや仲介システムなどとは異なるビジネスモデルで シェアを増やそうとする企業のカテゴリーである。同カテゴリーに参入しようとするスタートアップ企 業の数は多いが、投資額では上図のように伸び悩んでいる。
全米不動産協会の調査によれば、2015 年不動産購入者の 87%がエージェントやブローカーのサービスを 受けているという。この数値はディスラプターの存在にもかかわらずこの 10 年以上にわたって一定して いる。エージェントやブローカーのサービスを受けるという基本線は崩れていない。
そのため IT 技術はむしろ従来からの不動産ビジジネスモデルをさらに良くするといったサポート役とし て機能している。過去 10 年間にエージェントを使う取引の割合は 10%増加している。
このように売り手直売はこの10年間で半数に減っている。今後エージェントのサービスを使うという従 来型ビジネスモデルを基本としながら、アナリティックス、オンライン取引、AIといった最新技術がいたるところで使われることになりそうだ。
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